稟議書とは?稟議書の書き方と文例・フォーマットの見本も紹介

稟議書の書き方・稟議書の作り方のページ。稟議書とは会社・官公庁において会議を開く代わりに決裁を仰ぐ際に用いる書類のことを言います。「稟議書」と書いて「りんぎしょ」と読みます。本来は「稟(ひん=申し出るという意味)」のつく「ひんぎしょ」と読むのですが、慣用的な読み方の「りんぎしょ」がむしろ定着し用いられています。ここでは稟議書の書き方、作り方を例を用いて解説します。
[参考ページ]
・企画書1(目的,使い方)>>>
・企画書2(一枚タイプ)>>>
・企画書3(複数枚タイプ)>>>
・提案書の書き方>>>

1.稟議書とは

 稟議書とは企業や役所などにおいて決裁を仰ぐ際に用いる書類のことを言います。主に会議を開くほどではない事案の了承を得る際に用いられます。
 稟議書の主な特徴には以下のものがあります。

稟議書の特徴や意味

1.了承、決裁を得るだけで決定となる
2.担当者が1名であっても決裁を仰ぐことができる点が多数決とは異なる
3.書類をまわすだけで済むため、会議を必要としない
 上記の3つが稟議書の特徴であり、内容によって提出先とその目的が異なります。特に“書類だけで決裁を仰ぐ”という性格上、読み手にとってわかりやすい表現にすることが求められます。
なお、稟議書の書き方については次項「2.稟議書の書き方」で説明いたします。
 ところで稟議書はビジネス文書のうちの一つですが、職場によって名称が異なることもあります。
別名としては「起案書」「決裁申請書」などがあります。また、本来は目的が異なる「伺い書」という名称の書類も同じ目的で用いられることがあります。
  稟議書を作成する用件は、会社ごと・官庁ごとによって異なります。それぞれに規程が定められ、どんな用件において稟議書による決裁が必要かが定められています。
例えば会社においては大きな経営判断は「取締役会」などの会議において行なわれますが、小さな用件のうち、稟議書規程によって定められたテーマについては稟議書によって決裁が行なわれます
(※稟議書規程=企業や官庁において稟議書によって社内や庁内で決裁を仰ぐテーマが定められています。決裁が必要なテーマと稟議書の書き方、保管・保存期間、変更・取り消しのしかたなどが定められた規程を稟議書規程または稟議規程と言います)
 稟議書を書く主なケースには、以下のようなものがあります。

稟議書が作成される例
(稟議書はどんなときに書くの?)

※下記は一例です。いずれの場合も、企業や官庁、市区町村などにより稟議規程の内容や範囲が異なります。稟議書が不要なケースもあれば、逆に社長決裁が必要なケースもあります。
A.物品購入に関する稟議書
・物品の購入・導入・設置・仕入れなどに関し、一定の金額の範囲を決めて稟議書により決裁することがあります。
・物品の購入・導入・設置・仕入れなどに関して他社と契約を締結する場合に、契約締結の可否について社内決裁を仰ぐ意味で稟議書を作成することがあります。
B.使用や貸与に関する稟議書
・資産の使用や貸与(商標や著作権なども含む)、賃借に関し、一定の範囲を決めて稟議書により決済することがあります。
C.接待交際費に関する稟議書
・接待交際費に関し、一定の金額の範囲を決めて稟議書により決裁することがあります。
D.出張旅費に関する稟議書
・出張の内容や旅費に関し、(特に長期の場合や海外への赴任などの場合に)一定の金額の範囲を決めて稟議書により決裁することがあります。
E.取引に関する稟議書
・融資・取引(仕入れや販売)・契約に関し、一定の金額の範囲を決めて稟議書により決裁することがあります。
F.採用に関する稟議書
・職員や社員の採用に関し、稟議書により決裁をすることがあります。
G.新規事業に関する稟議書
・新規事業に関し、稟議書により決裁をすることがあります。
ただし、必要に応じて(事業分野により、また事業規模によっては)、稟議書による書面上の決裁ではなく会議もしくは取締役会などによる決裁となります。
H.新製品発売(および販売終了)
・新製品発売に関し、稟議書により決裁をすることがあります。同様に商品の販売終了を決裁することがあります。
ただし、必要に応じて、稟議書による書面上の決裁ではなく会議もしくは取締役会などによる決裁となります。
I.上記以外の、稟議書による決裁が必要と思われる事項
・稟議規程は、企業や自治体や官公庁が独自に決めているためその内容も様々です。上記以外にも必要とされることがあると思います。
例)借入、特許申請、論文提出、資格取得など。
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2.稟議書の書き方

それでは稟議書の書き方をご紹介します。
書式に決まりはないので、会社や職場で稟議規程を定めて書式を決めているところもあります。特に番号の付け方に関しては会社、自治体あるいは官公庁ごとに異なると思います。
また、捺印欄についても書式や体裁が変わってくると思います。
「ざっくりと理解する」というつもりでご覧下さい。
下記は、稟議書に盛り込む項目とそれぞれの必須度です。

ビジネス文書[稟議書]に盛り込む項目

項目説明必須度
1.宛名、宛先
 一般的に、社内向けの稟議書の場合には、宛名は社長あてまたは所属長、もしくは関係部署の責任者あてとなります。
宛名の記載ナシの書式を使用する会社・職場もあります。
ご参考までに…筆者の勤務先では宛名アリでした。
よくインターネット上で無料でダウンロードできる書式などが公開されていますが、こうしたフォーマットでは汎用性が要求されるために宛名のないタイプが多いようです。
宛名の書き方については、事前に貴社での社内文書の書き方を確認して下さい。
▽社外あてのビジネス文書であれば、郵送文書でもFAXでもメールでも
「社長 ◯◯様」「部長 ◯◯様」が正しい書き方となります。役職名はそれだけで敬称であり、◯◯社長様という書き方は敬称に様をつける形(二重敬語)になり「誤り」です。
▽社内で用いるビジネス文書では、現在でも意外に多く使われているのが「殿」(◯◯社長殿)です。もちろん本来の意味では「◯◯社長」または単に「社長」もしくは「社長 ◯◯様」が正しいのですが社内文書では慣例に従うのが最も無難だと思います。
(ご参考までに…筆者の元勤務先では「殿」を使っていました。「◯◯社長殿」「◯◯本部長殿」という表記です。ちなみに中小企業ではなく某大手企業です)。
2.管理番号あるいは通し番号
 稟議書は番号をつけて管理します。そのためナンバリングは不可欠であり、データとして管理する際に役にたちます。
一般的に番号の付与は、「10.受理」の担当者(稟議書を管轄している部署)が行なうことが多いようです(つまり、起案者ではなく、管理部門が番号をつけます)。
通常は、番号の付け方も企業や役所官庁ごとに決まっています。
例えば 筆者が以前勤務していた企業では、
[年度番号]−[テーマ・ジャンル番号]−[部署部門の番号]−[通番]といった具合に決められていました。これを数字にすると、
10-001-001-000001といった形になります。
「稟議書申請時の番号」と、「承認番号」の2種類を付与することもあります。このページの下の方に実際の書式の見本をご紹介しますので参照して下さい。
 3. につづく 

ビジネス文書[稟議書]に盛り込む項目 つづき

項目説明必須度
3.作成年月日、起案年月日
 稟議書の作成日を記載します。起案日と呼ぶこともあります。
4.作成者・起案者・記入者の所属部署名および氏名
 稟議書の作成者・起案者・記入者の所属部署名を記載します。
稟議書の作成者・報告者・記入者の氏名を記載します。
5.決裁者・承認者の捺印欄
 対象事項に関する決裁者・承認者の捺印欄(もしくは決裁者・承認者の署名欄)を作ります。
6.回覧先
 決裁または承認が下りたあとで、回覧すべき部署名などを記載します。
7.保存期間(保管期限)
 通常は、稟議対象となるテーマ別に保存期間が決まっています(会社や役所ごとに決められています)。まれに保存期間を記載する書式もみられます。
8.タイトル
 文書の中央上部に「稟議書」というタイトルをつけるのが一般的です。
タイトルは稟議書が一般的ですが、会社や役所・官庁によっては「起案書」「決裁申請書」などの名称の書類を用いることがあります。また、本来は目的が異なる「伺い書」という名称の書類も同じ目的で用いられることがあります。
用件に合わせて稟議の対象やテーマをタイトルに入れることもあります。例えば「購入稟議書」「購買稟議書」のように、「◯◯稟議書」「◯◯に関する稟議書」という名称にして使用されます。
9. につづく

ビジネス文書[稟議書]に盛り込む項目 つづき

項目説明必須度
9.稟議書の内容の項目
稟議書はなるべくA4用紙1枚程度におさまるようにします。
もし、書ききれない場合には本紙に内容を簡潔に記載し、別紙として資料等を添付します。
(9-1)目的事項
 承認を求めたり決裁を仰ぐ目的となる事項(内容)を記載します。
(9-2)分類
 稟議書の書式によっては、分類名が記載されていて、該当する項目にマルをつけるものもあります。
フォーマットに法律上の決まりはないので、あとで分類・保管しやすいようにあらかじめ会社側で書式を決めたり、ナンバリングの際に分類名を反映させたりします。
例えば、 「購入」「貸与」「使用」「交際費」「出張」「資格取得」「契約」「新規事業」「新製品発売」「特許取得」など。
(9-3)金額
 稟議書のテーマや目的によっては、所要金額を記載します。
(9-4)内容または概要
 稟議書はなるべく簡潔にまとめるようにします。
計画、プラン、品物名、数量などを書きます。もし内容の説明が必要な場合には、本紙では概要を述べ、詳細や資料は「別紙」という形で添付します。
(9-5)日付または日程や時期、スケジュール
 稟議書のテーマや目的によっては、日付けや日程を記載します。
時期・期限を記載することもあります。
(9-6)相手先
 稟議書のテーマや目的によっては、相手先を記載します。
相手先との関係、相手先情報(相手先が企業の場合には所在地、会社概要、売上など)を掲載することもあります。
(9-7)必要な人的資源
 稟議書のテーマや目的によっては、必要な人的資源について記載します。どんなメンバーが何名必要かなどを記載します。
(9-8)現状分析
 稟議書のテーマや目的によっては、現状の問題点を記載します。
(9-9)想定される効果
 稟議書のテーマや目的によっては、想定される効果、改善点を記載します。
例えば新製品の発売の稟議書の場合には売上目標やシェアであったり、購入稟議書の場合には導入により予想される効果であったりします。
10.受理日、受理印の欄
 稟議書を管轄する部署において、その案件を受理した段階で受理員を押印し、(必要があれば番号を付与してから)必要な相手に回覧します。
11.コメント欄、意見欄
 承認印を押す立場の人が意見を書くことができます。
条件つきで受理される場合にはその条件を書きます。
もし、差し戻しになる場合には、その理由を書きます。却下される場合にもその理由を書くことがあります。
※ 差戻しや却下の場合の文例・例文
「稟議対象として不適当」
「見積書を添えて再提出のこと」
「根拠データ不足。調査後再提出のこと」
「リスクの分析が不足している。再考を要する」 など。
12.別紙・資料
 稟議書はなるべく簡潔にまとめるようにします。
もし内容の説明が必要な場合には、本紙では概要を述べ、詳細や資料は「別紙」という形で添付します。
見積書や写真、カタログ、イラスト、図面なども添付すると良いでしょう。
13.保存・保管
 管理部門では、稟議書を保管します。稟議書という書類の形で保管するケースが一般的ですが、電子化してデータ保存する場合もあります。
 受理をもって保存される案件と、実行完了の報告を待って保存される案件があります。
[ワンポイント]
稟議書は、テーマの大きさに応じて決裁を仰ぐ相手が変わって来ます。
テーマ別に提出先のフローチャートをつくり、稟議書のフォーマットを作ると良いでしょう。また書式が固定されているテンプレートを使うよりも汎用性のあるソフトで自作することをおすすめします。次項で見本をご紹介します。
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3.稟議書の書式・雛形・サンプル

下記は、一般的な稟議書としてに使える稟議書の書式例(フォーム)としてご紹介します。ご自身で雛形をお作りになる際に参考になさってください。
青い数字については、このページの下の方で説明しています。
ご注意:
ここでご紹介している稟議書見本は、あくまでもフォーマットの一例です。
稟議書の書式には厳密な決まりがなく、それぞれの職場ごと(会社ごと、自治体ごと、官庁ごと)に定められた書式が用いられています。
これから初めて稟議書を作成するという方のために(雛形づくりの参考になればと思い)ご紹介致します。

ビジネス文書[稟議書]書式例の補足説明

項目説明
宛名、宛先
 ●一般的に、社内向けの稟議書の場合には、宛名は社長あてまたは所属長、もしくは関係部署の責任者あてとなります。
●宛名の記載ナシの書式を使用する会社・職場もあります。
管理番号あるいは通し番号
 ●稟議書は番号をつけて管理します。そのためナンバリングは不可欠であり、データとして管理する際に役にたちます。
一般的に番号の付与は、受理をする部門の担当者(稟議書を管轄している部署)が行なうことが多いようです(つまり、起案者ではなく、管理部門が番号をつけます)。
●通常は、番号の付け方も企業や役所官庁ごとに決まっています。
例えば[年度番号]−[テーマ・ジャンル番号]−[部署部門の番号]−[通番]といった具合につけるとすると、
10-001-001-000001 といった形になります。
上記のサンプルにもこのナンバリングの書式に則って作りました。
起案日、決済日
 ●提出の時には稟議書の作成日を記載します。起案日と呼ぶこともあります。
●決済日は、決裁権のある人が決裁または承認をした日付けを書きます。
作成者・起案者・記入者の所属部署名および氏名
 ●稟議書の作成者・起案者・記入者の所属部署名を記載します。
●稟議書の作成者・報告者・記入者の氏名を記載します。
タイトル「稟議書」
 ●文書の中央上部に「稟議書」というタイトルをつけるのが一般的です。会社や役所・官庁によっては「起案書」「決裁申請書」などの名称の書類を用いることがあります。また、本来は目的が異なる「伺い書」という名称の書類も同じ目的で用いられることがあります。
●用件に合わせて稟議の対象やテーマをタイトルに入れることもあります。 例えば「購入稟議書」「購買稟議書」のように、「○○稟議書」「○○に関する稟議書」という名称にして使用されます。
「稟議書」という表題(書面のタイトル)の下に添える文例、例文
  「下記につき決裁をお願い致します。」
  「下記の件につき承認をお願い致します。」など。
管理部処理欄
 ●管理部門で稟議書を受理し、ナンバリングをし、所定の手続きののちに、該当する人に回覧します。決裁後に決裁の結果を記入し、データベースに保存し、書類を保管します。
●接待交際費や出張の稟議などの場合、社長まで決裁をあおぐ必要がないケースがあります。こうした場合には不要な決済印のところに斜線(\)を入れます(下記 「決裁欄」を参照)。
※通常は役職や職等級ごとに決裁権限の範囲が決められています。
受付日
 ●管理部門で稟議書を受理した日付けを書きます。
決裁欄
 ●稟議書では決裁欄に捺印することが承認または決裁した証しとなります。会社や役所などで、役職名や階級の名称が異なる場合にはアレンジしてください。
役職が下の人の決裁を得てから、ようやくその稟議書は一段上の人の決裁へとまわされます。
●コメント欄を増やせば、それぞれの役職の人がコメントを書くことができます。
●条件つき決裁、条件つき承認という場合に備えて、コメント欄があります。例えば「○○社との契約締結成れば下記導入可」などの条件事項が記載されます。

[参考]
●通常は役職や職等級ごとに決裁権限の範囲が決められています。
例えば接待交際費や出張の稟議などの場合、社長まで決裁をあおぐ必要がないというケースがあります。
こうした場合には不要な決済印のところに斜線(\)を入れます(左の画像見本を参照。フォームの捺印欄だけを拡大表示したものです)。
決裁
 ●この例では承認、条件付承認、不承認のいずれかにマルをつけます。
※上記で紹介している書式の例ではこの3つ(承認、条件付き承認、不承認)に限定していますが、他にも「差し戻し」「修正承認」などという選択肢を作っても良いかもしれません。
承認番号
 ●承認または条件付承認の場合に、番号をつけます。この番号ナシで、稟議書番号だけで管理することもあります。
回覧先
 ●雛形として、モデル的な回覧先を入れてみました。部署の名称はご自身の職場に合わせてアレンジしてください。
内容または目的
 ●承認を求めたり決裁を仰ぐ目的となる事項(内容)を記載します。
分類
 ●内容のおおまかな分類をします。ナンバリングの際などに用います。
こうした分類の欄はなくても構いません。
費用または金額
 ●金額を書きます。購入費用や必要経費だけではなく、売上目標であったり、契約金であったりします。
日程
 ●出張であれば出張日程、購入であれば導入日程、契約であれば契約日、新規出店であれば開店日などを書きます。
概要
 ●承認を受けたい事項の概要を書きます。
箇条書きにするとわかりやすくなります。
現状の問題点や、導入によって想定される効果などを書くと良い稟議書になります。
備考
 ●別紙の有無や、見積書の有無を書きます。
※ここでご紹介しているビジネス文書はあくまでもサンプルです。お使いになる用途に合わせてアレンジしてください。
※稟議書の書式とともに重要なのが、稟議書の内容をデータとして管理する際のデータベースの構築です。分類方法、検索の仕方など、それぞれの企業、役所ごとに工夫してみてください。