誠意が伝わるクレーム対応の仕方

クレームのページ。クレームとは主に苦情のことをさします。ここでは主にビジネスの現場で取扱うクレームについて紹介し、クレーム処理の意味と謝罪文のマナーや文例などについて説明します。
 ビジネスシーンでのクレームを大きく分けると、商品に対するもの、サービスに対するもの、待遇に関するもの、商品やサービスの提供に伴って二次的に発生するものに大別されます。

■ クレームとは(クレームの意味)

 クレームとは主に苦情のことをさします。本来、クレーム(claim)を申し立てる際には損害賠償請求がつきものでしたが、現在の日本では損害の賠償請求を伴わない異義や苦情の場合にもクレームと言う言葉が多く使われます。クレームそのものはビジネスに限定されるものではなくプライベートでも発生することがありますが、ここでは、主にビジネスシーンでのクレームについてご紹介します。
 2010年、大手の自動車メーカーに寄せられたクレームの処理の仕方(方法)が問題になって大規模なリコールへと発展したのは記憶に新しいところです。寄せられた情報をきちんと分析して対策を取るだけでなく、社内でデータとして共有化しなくてはなりません。
まずはクレームにはどんな種類があるのか分類してみましょう。
[クレームの種類]
分類想定されるクレームの内容
1.商品に対するクレーム
 製品や商品が仕様と異なる場合
誇大広告であり、実際の商品や製品と異なる場合
商品や製品の機能、性能に問題がある場合(正常に稼動しない場合)
商品や製品の耐久性に問題がある場合
商品や製品の安全性に問題がある場合
2.サービスに対するクレーム
 事務処理や手続き上のミスがあった場合
誇大広告であり、実際のサービスとは異なる場合
社員やスタッフから不当または不快な接遇を受けた場合
マニュアルや取扱い説明書がわかりづらい場合
期限や時間を守らなかった場合
製造・仕入れ・提供数量が少なく、すぐに品切れとなった場合
スタッフ教育、社員教育に関して不満がある場合
設置工事、取付工事などがずさんであったり、適正な作業がなされない場合
3.商品やサービスの提供に伴って二次的に発生するクレーム
 トラブルや事故や不祥事により、その企業の株価が下がった場合
商品や製品の使用によって健康被害や体調不良が発生した場合
経営戦略、経営方針に不満がある場合
商品やサービスが全く売れない場合
工場、事業所から出る騒音やゴミの処理や対応が適切になされていない場合
工場、事業所による大気汚染、水質汚染、土壌汚染が発生した場合
事業所や工場もしくは製品の運搬経路、販売店などにおいて適切な安全管理がなされていない場合
4.待遇に関するクレーム
このクレームは主に社内、または契約先からのものです
 勤務時間・給与・休日休暇などにおいて、事前の告知と異なる待遇を受けた場合
セクハラ、パワハラをはじめ人的ないやがらせを受けた場合
就労により健康被害が発生した場合

■ クレームの重要性

 クレームは「情報の山」とか「宝の宝庫」などと言われます。逆に一歩クレーム処理のしかたを誤ると企業の存亡にかかわるような大問題に発展することもあります。
  寄せられた情報をきちんと分析して対策を取るためにも、なぜクレームが重要なのかを考えてみましょう。
[クレームの重要性]
分類クレームの種類なぜクレームが重要なのか 及び、
適切なクレーム処理をしない場合のリスク
1.商品に対するクレーム
製品や商品が仕様と異なるというクレーム
 品質管理に問題がある可能性がある

検品体制や計測機器に問題がある可能性がある。

表示、原料、生産体制、製造方法などについて見直す機会を得ることができる。
誇大広告であるというクレーム
 不当景品類及び不当表示防止法(いわゆる景表法)に抵触、または
商品のジャンルによっては薬事法や食品衛生法に抵触することもある。
機能、性能に関するクレーム
 思いがけない重要な欠陥がかくれている可能性がある。
生命や健康にかかわる事態や、リコール問題に発展することも。

逆に、新製品開発のアイディアの芽となる情報や改善、改良提案もある。
商品や製品の耐久性に問題があるというクレーム
 原材料管理、商品設計、スペック、耐久テストの見直しが必要になる。
思いがけない重要な欠陥がかくれている可能性がある。
商品や製品の安全性に問題があるというクレーム
 安全性試験、実際の使用シーンや摂取シーンを想定したテスト、原材料管理、商品設計、スペックの見直しが必要になる。

思いがけない重要な危険性がかくれている可能性がある。

逆に、PL法に基づいた表示を新たに加えたり、新製品開発のアイディアの芽となる可能性もある。
分類クレームの種類なぜクレームが重要なのか 及び、
適切なクレーム処理をしない場合のリスク
2.サービスに対するクレーム
事務処理や手続き上のミスがあったというクレーム
 人的ミスか?システム的なミスか?など、ミスの原因究明をし、再発防止に努めることができる。根本的な原因を究明しないと、何度も再発するおそれがある。

逆に、ミス防止の対策が、思わぬ 効率化につながる可能性がある。
誇大広告であり、実際のサービスとは異なるというクレーム
 不当景品類及び不当表示防止法(いわゆる景表法)に抵触することもある。
社員やスタッフから不当または不快な接遇を受けたというクレーム。
 改善せずに放置しておくとリピーター利用が無いばかりか、クチコミなどにより悪評が広がると顧客が減る可能性もある。

逆に、どんなサービスや態度が悪かったのかを分析することにより、お客様に喜んで頂くことや、快適に過ごしていただくことを追求し、集客につながったり、売り上げ向上につながることも。
マニュアルや取扱い説明書がわかりづらい場合
 問い合わせの対応や説明に時間を取られ、非効率。

逆に、寄せられた情報を活かし、わかりやすく使いやすいマニュアル、取扱い説明書、ウエブサイト、Q&Aなどを充実させることにより顧客からの印象やイメージが良くなる。
期限や時間を守らなかった場合
 根本的な原因を究明し、解決しないと、顧客や取引先を失うおそれがある。

逆に、再発防止の対策が、思わぬ 効率化につながる可能性がある。
製造・仕入れ・提供数量が少なく、すぐに品切れとなった場合
 品切れにより、貴重な販売機会を失うことに。

もし原因が製造能力にある場合には、勤務シフト、製造ラインの見直しなどにより柔軟な生産体制を敷くことができる。
また、委託先、下請けなどの開拓をすれば、効率的に生産委託ができるようになる。

また、原因が販売予測にある場合には、より正確な販売予定をたてるための変数を分析し、精度をあげることができるだけでなく、欠品の再発防止につなげることができる。
スタッフ教育、社員教育に関して不満がある場合
 改善せずに放置しておくとリピーター利用が無いばかりか、クチコミなどにより悪評が広がると顧客が減る可能性もある。

逆に、どんな態度が悪かったのかを分析することにより、お客様に喜んで頂くことや、快適に過ごしていただくことを追求し、集客につながったり、売り上げ向上につながることも。
設置工事、取付工事などがずさんであったり、適正な作業がなされない場合
 工事業者に起因するものか、他に原因があるのかをきちんと分析しないと同様のトラブルが再発する可能性がある。

逆に、原因分析により 工事業者の適正な選定をすることができる。また、正しい設置取付工事のためのマニュアル作りなど、新しい基準づくりも可能となる。
分類クレームの種類なぜクレームが重要なのか 及び、
適切なクレーム処理をしない場合のリスク
3.商品やサービスの提供に伴って二次的に発生するクレーム
トラブルや事故や不祥事により、その企業の株価が下がったというクレーム
 分析により、何が株価に影響するのかを知り、今後の対策に役立てることができる。
商品や製品の使用によって健康被害や体調不良が発生したというクレーム
 最初に、一刻も早く状況を正確に確認することが必要となる。原因分析と、医療面 での対応が必要かどうかの判断が必要となる。関係諸機関への届け出が必要なこともある。
場合によっては保健所からの指導、最悪の場合には訴訟問題になる可能性もある。

逆に、こうした対応を経験することで、緊急時の対応マニュアルを作ることができる。
また、社内での製品サンプルの保存期間の見直しや、検査項目の見直しなど、社内基準も改めて作成することができる。
経営戦略、経営方針に不満があるというクレーム
 聞く姿勢は大切。こうした対応を経験することで、対応マニュアルを作ることができる。
商品やサービスが全く売れないというクレーム
 販売店からの意見が寄せられる場合もあり、聞く姿勢は大切。こうした対応を経験することで、対応マニュアルを作ることができる。
逆に、新製品開発のアイディアの芽となる情報や改善、改良提案もある。
工場、事業所から出る騒音やゴミの処理や対応が適切になされていないというクレーム
 情報の真偽の確認の上、対応を要する。
場合によっては市区町村からの調査や保健所からの指導、最悪の場合には訴訟問題になる可能性もある。

こうした対応を経験することで、対応マニュアルを作ることができる。
また、社内での管理項目の見直しや防音対策など、社内基準も改めて作成することができる。
工場、事業所による大気汚染、水質汚染、土壌汚染が発生しているというクレーム
 まずは一刻も早く状況を正確に確認する。現状把握、原因分析、設備面 での対応が必要かどうかの判断が必要となる。関係諸機関への届け出が必要なこともある。
場合によっては保健所からの指導や操業停止、最悪の場合には訴訟問題になる可能性もある。

こうした対応を経験することで、緊急時の対応マニュアルを作ることができる。
また、社内での管理項目の作成、必要な設備投資、検査項目の見直しなど、社内基準も改めて作成することができる。
事業所や工場もしくは製品の運搬経路、販売店などにおいて適切な安全管理がなされていないというクレーム
 現状を把握することで、危険を未然に防止することができる。
また、社内での安全管理の徹底や、安全基準の作成や見直しをすることができる。
分類クレームの種類なぜクレームが重要なのか 及び、
適切なクレーム処理をしない場合のリスク
4.待遇に関するクレーム
このクレームは主に社内、または契約先からのものです
勤務時間・給与・休日休暇などにおいて、事前の告知と異なる待遇を受けたというクレーム
セクハラ、パワハラをはじめ人的ないやがらせを受けた場合
 改善せずに放置しておくと社員が定着しないばかりか、クチコミなどにより悪評が広がると応募者も減る可能性もある。
労働基準監督署の調査や指導を受けることもあるほか、場合によっては訴訟に発展することもある。

逆に現状を把握し、改めることで、社員が定着するようになり、社内が活性化することも。
就労により健康被害が発生した場合
 まずは一刻も早く状況を正確に確認する。現状把握、原因分析、設備や勤務シフト、就労条件における見直しや対応が必要かどうかの判断が必要となる。関係諸機関への届け出が必要なこともある。
場合によっては医療の専門家のアドバイスを要する。最悪の場合には訴訟問題になる可能性もある。

こうした対応を経験することで、緊急時の対応マニュアルを作ることができる。
また、社内での管理項目の作成、必要な設備投資、検査項目の見直しなど、社内基準も改めて作成することができる。健康面 、医療面でのサポート体制はこれからの企業経営にとって不可欠。

■ クレーム対応の仕方

それではクレームの対応の仕方(方法)にはどのようなものがあるのか考えてみましょう。
クレームの内容や緊急性により、その対応が異なります。
社内で、対応マニュアルを作成する際に役立てて下さい。
[クレームの対応のしかた]
クレームの対応にはいくつかの段階あります。
クレームの内容や原因の分析・調査などについては所定の時間を要しますが
「まずはお詫びをする」、あるいは
「まずは謝罪メールを送る」
「まずは謝罪文を手紙で送る」
といった対応が必要です。
そのあと、必要に応じて対応をします。
[クレームの対応にはいくつかの段階がある]
ステップ1
●お詫びをする
●謝罪メールを送る
●謝罪文を手紙で送る
ステップ2
●クレームの内容を社内に報告
ステップ3

●データベース化して社内で共有する。
●対応マニュアルに生かす。

 ★必要な対策をする。
 ★再発防止につとめる。

一部のクレーム はこれで完了↓完了しないものは次のステップへ↓
ステップ4
●クレームの内容や原因の分析・調査をする。
ステップ5
●調査結果を社内に報告。
ステップ6
●謝罪文を手紙で送り、調査結果を報告する
(お詫び状や謝罪文を含めた文書でのお詫びが正式となるが、場合によっては電話での報告+書面 でのお詫び、あるいはメールでのお詫びといった形もある)
ステップ7
●データベース化して共有する。
●対応マニュアルに生かす。
 ★必要な対策をする。
 ★再発防止につとめる。
一部のクレーム はこれで完了↓完了しないものは次のステップへ↓
ステップ8
●対策チームを作る
ステップ9
●調査、分析、検討、改良、改善、報告
ステップ10
●調査結果を社内に報告。
ステップ11
●必要に応じて、クレームの主に報告。
ステップ12
●データベース化して共有する。
●対応マニュアルに生かす。
 ★必要な対策をする。
 ★再発防止につとめる。
 ★必要があれば情報を公開する。
[実際に行なう対応]
下記でいう緊急性とは、謝罪を含めた何らかの対応を、とにかくすぐにしなくてはならないかどうかという意味です。
分類緊急性主な対応
まず行なう対応次に行なうべき対応
A.電話で寄せられたクレーム
緊急性大のクレーム
 まず行なう対応次に行なうべき対応
●電話でのクレームは緊急性大のものが多い

●相手の話を良く聞く。
 内容に応じて、その場でお詫びをするのか、あるいは担当部署または責任者に電話を繋ぐのかの判断を要する。

●もし、折り返し電話をかけ直す場合には一刻も早くかけ直すようにする。

●状況によってはすぐに先方に駆け付ける必要があることもある。
●必要があれば、
上記ステップ6または
ステップ10のように
詳細な調査の後に
改めて謝罪文と報告をする。
緊急ではないクレーム
 まず行なう対応次に行なうべき対応
●相手の話を良く聞く。
 内容に応じて、その場でお詫びをするのか、あるいは担当部署または責任者に電話を繋ぐのかの判断を要する。

●もし、折り返し電話をかけ直す場合には一刻も早くかけ直すようにする。
●必要があれば、
上記ステップ6または
ステップ10のように
詳細な調査の後に
改めて謝罪文と報告をする。
B.メールまたはFAX(ファックス)で寄せられたクレーム
緊急性大のクレーム
 まず行なう対応次に行なうべき対応
●電話回線が混雑している場合に、緊急のクレームがファックスで寄せられることがある。

●営業時間外に発生したクレームの場合に、ファックスで連絡が来ることがある。特に時間外に電話すると音声アナウンスが流れる設定になっている企業に多い。

●内容を把握し、折り返し一刻も早く電話をかけ直すようにする。
●必要があれば、
上記ステップ6または
ステップ10のように
詳細な調査の後に
改めて謝罪文と報告をする。
緊急ではないクレーム
 まず行なう対応次に行なうべき対応
●営業時間外に発生したクレームの場合に、ファックスで連絡が来ることがある。特に時間外に電話すると音声アナウンスが流れる設定になっている企業に多い。

●メールで届いたクレームの場合には、遅くとも翌営業日中には謝罪メールなどの何らかの返信メールを送る。
●必要があれば、
上記ステップ6または
ステップ10のように
詳細な調査の後に
改めて謝罪文と報告をする。
C.手紙やハガキで寄せられたクレーム
緊急ではないクレーム
 まず行なう対応次に行なうべき対応
●手紙やハガキで届いたクレームには、遅くとも手元に届いた翌営業日中にはお詫び状や謝罪文などの書面 を送る。

●クレームの内容が重大な場合には手元に届いた時点で一旦先方に電話を入れて状況を尋ねる。電話番号の記載がない場合には、返信用の書面等で連絡先を尋ねるようにする。
●必要があれば、
上記ステップ6または
ステップ10のように
詳細な調査の後に
改めて謝罪文と報告をする。
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